第7回:DX推進のためのコラボレーションとは?

コラボレーションの視点は、「企業内連携」と「企業間連携」の2つです。今回はこの2つの連携における、必要な内容についてお話します。実は、コンサルタントを実施すると、「企業内連携」の方が難しく感じることが多いです。

 

まず、DXでなぜ「企業内連携」が必要なのかと言うと、DXは企業の全体最適を図ることが重要であることと、IoTInternet of Things)に始まる「つながる世界」においては、DXの推進は全社一丸が必須だからです。DXの推進においては、専門の部署を作っても良いですが、この部門だけではDXの推進はうまくいきません。製造業を例にすると、DXの推進は、経営企画や情報システム部門はもちろん、製造関係の製造/生産技術/生産管理などの部門、開発部門、物流部門、購買部門、営業部門、人事/総務部門なども必要になります。しかしながら、従来から業務を一緒に実施していない部門同士がDX推進のプロジェクトに参加すると、価値観や通常使っている用語の違いから、うまく連携することができず、チーム作りに3か月ほど費やすことも珍しくありません。さらに言うと、セクショナリズムが大きい企業の場合、人間関係がこじれ、DXの推進どころか、組織の弱体化につながることすらあります。

 

一方、「企業間連携」の方が難易度が高いかもしれませんが、最初の段階でパートナーとなる企業をしっかり検討し、うまくいかないのであれば別のパートナー企業を探すという様に、上記の「企業内連携」と異なり割り切る考え方が可能です。また、企業間では契約などによる準備を行うことで、契約に基づいた連携を行うことは比較的容易と考えます。ただし、日本では契約により役割を明確にする文化では無く、長年の信頼を基にした協業を重視する傾向にあります。確かに信頼も重要ですし、長年のパートナーとはやりやすい面も多いとは思いますが、DXの時代では変化もはげしく、どの企業と連携するかも柔軟に切り替える必要があります。これも欧米的な従来からのライバル関係である企業同士でも、目的を限定しデータを共有するような考え方が必要になりますし、そのためには従来とは異なる日本の慣習的/形式的な契約の変更が必要になります。

 

具体的な例をお話し致します。ライバル企業とデータを共有した方が良い場合として「異常状態の検知」などがあります。共通性の高い、例えばプラントの配管の腐食の進行度合いなどは、ライバル企業といえども、データを共有することで異常検知の精度が高まります。特に複数の企業がデータ共有することで、一社では複数年かかるデータ収集が半年で済むということもあります。また、設備の故障予知などは開発技術をもった設備メーカー主導で、幅広いユーザ企業からデータを収集することで故障予知の精度をあげ、開発の高度化につなげる戦略が米国では当然にように実施されています。日本では、設備などの故障予知を進めようとした際に、設備メーカー側は「そのような技術はもっていない」「保守料をもらっている定期点検の重要性が下がる」などの考えがあり、ユーザ側企業も「データのセキュリティが心配」「他の目的に利用されると競争力に関連する問題が発生する可能性がある」などから、日本では容易に、このメーカー主導で複数のユーザ企業がデータを提供(共有)する故障予知が進まないのが現状です。

 

その際、データ共有などで重要なのは先ほど述べた契約条件などになります。従来の守秘義務契約と異なり、AI(人工知能)などを利用した場合、1次データから生み出される2次データや故障予知のモデルなどの帰属先や権利をどのようにするかを契約により明確にする必要があります。また、データの利用目的や対象範囲を明確にしないと談合や独占禁止法に関わる可能性があり注意が必要です。日本では、このような協業が進まないのが問題でしたが、最近は経済産業省などが大手化学プラントメーカーなどを纏め、ガイドラインを作成し、データ共有/実証実験なども推進しています。

 

 話は変わりますが、昨今、多様性の重要性が取り上げられていると思います。この意味は、単に人材不足だから海外から人を雇えという意味(リソース不足の穴埋め)ではありません。DXは、改革であり、従来の延長線上で同じような考え方をしているメンバーが集まっても、何も生まれないことも多いです。多様なメンバーが集まり、自分とは異なる意見を受容し、そのうえで新たな発想をしていくことで、DXが成功します。日本では、この多様な人材と業務を進める経験が少なく、場合によっては学生時代を含めてそのような経験を全くしていない人も多いかもしれません。この多様性というのは国籍、性別、年齢の違いだけではなく、文化の違いや価値観の違いが重要であったり、簡単なところから言うと、文系/理系の発想の違いでもかまいません。このように自分と違う、自組織には無い、多様な人材を積極的に受け入れコラボレーションできている組織と、従来と同様に自前主義で進めている組織では、DX推進に圧倒的な差がでてくると思います。最近、このような考え方をダイバーシティ―(多様性)と共にインクルージョン(包括)と表現しています。

 

第8回のDXコラムは、こちら

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